数日前、もう日付が変わろうかという頃、ぼくは柴犬のチビと一緒に自宅でテレビを見ていました。

ただ、見ているといっても集中しているわけでもなく、もうそろそろお風呂に入ろうか或いはちょっと小腹が空いたのでカップラーメンを作ろうかなんて考えながらの事です。
自宅は田舎で畑ばっかりだが、片側一車線ながらも一応幹線道路沿いにある。
数件となりには美味しい創作料理とお酒が飲めるお店などもあることから、時たま奇声が聞こえたりもする。
その日は確か週の真ん中。
飲んで酔っ払ってしまうような日ではなかった筈なのに、その時間に誰かが早口で何か騒ぎながら裏の通りを走っている音が聞こえた。
サンダルをズッズッっとすりながら早足で移動しているようだ。
でもなんだかその足音はこちらに向かっている様。
誰かがいたずらでもしに来たらヤダナーなんて思っていると、確かにこっちに近づいてきている。
それも何かを叫びながら。
僕はとっさにテレビを消して何を言っているのか聴こうとしたが、リモコンを探しているうちにその音は自宅の玄関まで来てしまった。
ガシャンガシャンガシャンガシャン。
家の玄関はガラス戸で、こぶしで桟をたたくとこんな音がする。
さらにガシャンガシャンガシャン。
僕はどうしようかチビを見ながら考えた。
もし、不審者だったらチビが向かっていって、蹴飛ばされたり何かされてしまうかもしれない。
でも、考えているうちにもガラス戸は叩かれ続けている。
僕は意を決して、でも、用心して見に行った。
恐る恐る見るとそこには顔から血の気が引いた隣のおじさん。
どうしたのといいかけたが、おじさんが「火事だから消防車呼んで」と叫んで、いい終わるとまたズッズッと早足でサンダルをずりながら戻っていった。
僕はその姿を見て、すっかりあせってしまい、消防が何番か判らなくなっていた。
どうしよー。
でも、電話する前に家族を起こそう。
と思って、すぐに両親を起こした。
ついでに消防の番号も何番だっけと確認。
もしもし、隣が火事なんです。
消防「建物火災ですか?」
あっ、聞いてないんですけど、家事だから消防呼んでって言われたので電話しました。
消防「わかりました。あなたの携帯電話教えてください。」
何番だっけ? ちょっとまってください。 (携帯を見ながら)えっとー000***です。
消防「いつでも携帯に出られるようにしていてください。安全なところにいてくださいね。」
確かこんなやり取りで電話を切りました。
その日は風が強かったので、家に延焼したら嫌だなと思いながら僕もサンダルをはいてズッズッと早足で外に出た。
出てびっくり。
火の手ガ見えたが、それはもう電線まで届く勢い。
心の中で、ウワっと叫んだ。
ただ、燃えているのは建物ではなく、そのすぐ真横にあるシュロの木だった。
やしの木のようなもので、木肌は燃えやすくなっていた。
どうやらおっちゃん。真夜中にその木の下で焚き火をしていてそれが燃え移ってしまった様。
ちょっとほっとしたものの、すぐ隣は建物なのでこのままでは家まで燃えてしまうのは時間の問題という事は僕にもわかった。
幸い風は逆に吹いているので家にはこなそうだ。
何を思ったか隣のおじさんが突然燃え盛る木にはしごをかけて登り始めた。
風呂桶片手に火を消そうとしている。
チョ、ちょっとおじさん。危ないよ。
降りなよ〜。
火の粉をかなり被って、見ているほうが火傷しそうだった。
そんな事より今消防呼んだから犬どかしたほうがいいよ〜。
気が付けば燃え盛る木の下にはおっちゃんが可愛がっている犬が繋がれているままで、荒れ狂うように吼えていた。
おっちゃん「おお、そうだな」
そうだなじゃないよー。
そうこうしている内に、ついに消防が到着。
おそらく電話してから5分も経っていない。
まわりは近所のおじさん、おばさんや通りすがりの車でちょっとした集会。
おまわりさんが来て、「どいてどいて、消防車が来るから」
消防車が次から次と4台くらい到着。
すかさず放火、いえ、放水。
建物にも水をかけている様子だが、ほんの数分で鎮火。
町内放送でも、鎮火を知らせる放送があった。
消防に電話くれた人いる?ということで、消防署の人が僕のところへ来た。
かなり興奮していたので何を話したか覚えてないが、「ありがとうございました」といわれ一件落着?
眠れずに朝に。
呼んでくれてありがとうございました。
実話です。